アルマゲストを題材とした弦の表の授業実践
ー天文学との関わりを踏まえてー

筑波大学教育研究科 中村友也 

1、研究意図・目的

生徒が数学に関して抱いている印象でよく聞かれるものは、「数学は役に立たない学問だ。」、「数学は自分の将来には役に立たないと思う。」などが挙げられる。多くの生徒は数学に関して楽しさ、よさを感じていないのではないのか。このようなことを受けて、今日学際的な教育が重視されている自然と数学の結びつきという視点から、数学史の指導の実践例として、天体の観測のために作られた「弦の表」を題材として取り上げ、。原典の考え方を追体験することによって、生徒の数学観の変容に貢献するかを考察していく。

2、研究内容
紀元後2世紀ごろ、プトレマイオスによってまとめられた天動説を題材に、原典として『アルマゲスト』を用いた。そして、天体観測から弦の表がなぜ必要になったのか、どのようにして弦の表を完成していったのかが追体験できるよう教材を工夫した。そして、実際の天体観測に弦の表が有効に働くことを確認できるように天体の動きをモデル化し、惑星間の数値を求めた。県立高校の有志8名を対象とし、三時間の授業を行い、授業前後でのアンケートにより、生徒の数学間がどのように変化するかを調べた。指導目標は、原典解釈を取り入れ、数学と自然とのかかわりを知ること、数学が人の営みであることを理解できるようにした。

3、研究のまとめ

「天動説」を題材として授業の実践を行うことにより、生徒は数学を人の営みであるととらえ、数学と自然との結びつきを理解したと考えられる。これは、天体観測を行ううえでの、角度しか測れない困難を、どのように先人たちは乗り越えたのか、自然界の現象を記述するのに数学がどのように有効に働くのかを授業によって感じ取ったからであると考えられる。そして、プトレマイオスの原典を解釈することで、考えを追体験することによって、生徒自信が当時どのような数学が考えられていたのかを体験し、現在の数学との比較をして考えることができたからであると考えられる。そして、身近な自然の現象を対象に分析を体験し、そこに面白さをj感じ取り、自然現象を分析していくような数学に興味関心を持ったようである。よって、原典解釈を取り入れることは、数学を人の営みとして捉えるのに有効であるといえる。また、他教科との関連に数学史を入れることも有効であると考えられる。



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