研究の要旨
本研究は、以下のように行われた。
1 目標:アポロニウスの問題(「ある条件を満たす円の作図を行うこと」)の考察を通して、ギリシャ時代の数学に対しての興味・関心を高め、生徒の歴史・文化としての数学の位置づけと数学観の再構成を行うこと。
2 授業内容:授業は、数学史的な話題を扱い、数学における概念の形成や人間と文化とのかかわりについて生徒達が考える機会を持てるようにした。授業では、全体の説明をパワーポイントで行ない、説明後には各自がパソコンで実習する形態を採った。(コンピュータ室を使用した。一人一台のパソコンが使用可能であった。)パソコンを使用し、作図問題の解法に取り組んだ。点、直線、円などの作図は作図ツール“Cabri-GeometryU=カブリ”を用いた。授業対象生徒は、高校二年生、授業実施時期は、10月下旬、授業時間は、三時間であった。
3 教材開発:ギリシャ時代(BC300頃)の数学に焦点を当て、教材は一次文献(原典)を引用する形で開発した。(引用文献:Greek Mathematics WorksU p344)
【1時間目の授業概要】…@ギリシャ時代の数学について調べ、アポロニウスの問題の概要をつかむ。
Aカブリの基本的な操作について習熟する。
【2時間目の授業概要】…@前時での宿題の解答・解説を行う。
Aカブリの基本的な操作の復習を行う。
Bアポロニウスの問題の1番目(3点を通る円の作図)と2番目(3直線に接する円の作図)の解法をカブリを使って行う。
【3時間目の授業概要】…@前時での宿題の解答・解説を行う。
A外心と内心を作図し、その点を中心とする円の作図を行う。
Bアポロニウスの問題の3番目(2点を通り、1直線に接する円の作図)の問題の解法をカブリを使って行う。
C授業のまとめとアンケートを行う。
4 本研究から得られた結果: 次のような生徒の感想があった。『ギリシャ時代の数学なので、昔の問題だと軽く見ていたが、そうではなかった。』『アポロニウスの問題をニュートンが考えたなんて…。歴史の流れを感じた。』『2000年以上前の人がパソコンなどを使わずにこんな問題をよく考えることが出来るなあと感心した。』これらの感想からも、授業で数学史的な話題を取り上げることにより、数学における概念の形成や人間と文化とのかかわりについて考える機会を得られたことで、数学観の変容が見られ、数学に対する興味・関心を高めることができた。
5 参考文献:アポロニウスの著作については以下の文献を参照されたい。「Apollonius of Perga(T.L.Heath)Cambridge:At The University Press 1896」