ライプニッツ差分のグラフ表示による微分指導

―「分数式にも無理式にも煩わされない極大・極小ならびに接線を求める

新しい方法」を教材として―

筑波大学大学院修士課程教育研究科

関 淳

1.  研究目的

 微積分の学習は高校数学を代表する単元といえる。しかしながら生徒の習熟度に関しては、導関数の方程式の求め方や、3次関数のグラフの求め方といった計算技術としての一面のみが先行してしまいその本質を理解している生徒は少ないように思われる。そこで本研究においては、平成15年より施行される高等学校学習指導要領で新規に加えられた「数学基礎」で紹介されている数学史に注目し、微分法をその誕生の歴史から学び当時の原典を解釈することにより、これまでの微分に関する概念と歴史上の微分法を比較し、微分法の必要性、有用性を改めて実感し微分に対する興味関心を引き出し、微分の本質を理解することを目的とした授業を実践した。

2.    研究方法

 17世紀微積分学形成期において、微分指導に有用であろう題材は数多く存在するが、本研究においては微積分学の創設者のひとりと言われるG.W.ライプニッツを取り上げ、彼の世界最初の微分法に関する論文「分数式にも無理式にも煩わされない極大・極小ならびに接線を求める新しい方法、またそれらのための特別な計算法」を題材にし、公立高校第2学年の学生2クラス(数学U「微分法」履修中)85名に対して65分の授業を2時間行った。このなかでライプニッツは極限の概念を用いることなく微分を差分と呼ばれる線分で表しており、原典を解釈することで生徒は極限と言う抽象概念にとらわれることなく微分と接線の傾きというつながりにのみ注目し微分を学ぶことができ、また差分を実際作図ツール(Cabri GeometryU)を用いることで作図し、これの軌跡をとることにより、微分と導関数の関係が視覚的にグラフとしてみてとることができるということをねらって授業を行った。

3.  結果と考察

 授業後のアンケートによると、多くの生徒から「微分の基本概念のようなものがわかった」や「うるおぼえであった導関数が目で見えることによって理解が深まった」や「これだけいろんな人が苦労して出来たものならば微分をわからずじまいにしてはいけない」といった、微分に関する興味の増大や理解の深まりをしめすような発言がみられた。これらの結果も含めた上で考察した結果、数学史を用いた微分指導が生徒の微分概念をより深く本質に沿ったものになる本研究の目的は達成されたように思われる

【参考文献】

    G.W.Leibniz(1684)NOVA METHODUS PRO MAXIMIS ET MINIMIS,ITEMQUE TANGENTIBUS,QUAE NEC FRACTAS NEC IRRATIONALES QUANTITATES MORATUR,ET SINGULARE PRO ILLIS CALCULI GENUSMathematische Schriften XOLMSpp.220-236

    G.W.LeibnizThe first publication of his differential calculusA source book in mathematics,1200-1800 ed D.J.StruikCambridge , Mass : Harvard University Presspp.271-284

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