要約
筑波大学教育研究科 諏佐 洋一 |
本研究題目 歴史的道具「比例コンパス」を用いた数学的活動による授業研究 −ガリレオの軍事的コンパスを題材として− |
1.はじめに 本研究は、数学史と道具を題材とした数学的活動を行うことによって、生徒が数学と日常生活を結びつけることができ、数学に対して興味・関心を持つことができるか、創造性の基礎を培うことができるかを考察する。 |
2.研究目的・研究方法 研究目的 数学史とそれにちなんだ道具を題材とした授業を行うことで、数学を人の営みとして捉え、数学への興味・関心を一層喚起するとともに、創造性の基礎を培うことができるかを考察する。 目的達成のため、以下を課題とする。 課題1:歴史的な道具の構造・原理を解釈することにより、道具の中にある数学を見出し、数学を人の営みとして捉えることができるか。 課題2:課題1の達成と、歴史的な道具を実際に使ってみることによって、数学と日常生活との結びつきを感じることができるか。 課題3:課題1、課題2を通して、創造性の基礎を培うことができるか。 研究方法 数学史とそれにちなんだ道具を用いたオリジナルの教材を作り、授業研究を行う。そして、授業前後のアンケート、ビデオによる授業記録を基に、課題が達成されたかどうかを判断する。 |
3.「比例コンパス」の教材化 ガリレオの比例コンパスは、別名「軍事的コンパス」とも言われるように、本来、あらゆる内径の大砲とあらゆる物質の砲弾に対して、どれだけの火薬量を装填すべきか即時に決定すること(装填量決定問題)や戦場における測量を目的として発明された。 ガリレオは比例コンパスの説明書として『Le Operazioni del Compasso Geometrico et Militare』(1606)を書いている。しかし、比例コンパスの鍵となる目盛りの取り方は公表せず、これをパドヴァ大学での職の更新と昇給に利用した。 そこで、授業では〜ガリレオに挑戦〜と題して、Stillman Drakeによる英訳本『The Operations of the Geometric and Military Compasses』(1977)を原典として扱い、原典から比例コンパスの目盛りの取り方を探る数学的活動を行った。 |
4.「比例コンパス」の数学的解説 報告書を参照。 |
5.「比例コンパス」の授業概要 報告書、スライド、テキスト等を参照。 |
6.議論 課題1について 授業後のアンケートから、生徒は道具の中にある数学を見いだしており、その道具のよさを感じていることがわかる。また、数学を人の営みとして捉えたり、数学を作り上げてきた昔の人々に敬意を示している生徒も見られた。 課題2について 課題1の達成と、実際に道具を使って日常生活における問題を解決したことによって、道具を媒介として日常生活と数学の結びつきを感じることができた。 課題3について アンケートや授業記録から、多面的にものを見る力、論理的に考える力、数学的な見方や考え方のよさを認識する豊かな感性など創造性の基礎が培われたと考えられる。 |
参考文献 礒田正美(2003).なぜ道具を数学教育で活用する必要があるのか:道具を使ってこそ学べる数学の教育的価値を明かすためのパースペクティブ.日本数学教育学会 第36回 数学教育論文発表会 「課題別分科会」 発表集録 |