要約
筑波大学教育研究科 石川智史
本研究題目
機構を題材とした授業実践〜楕円・双曲線の作図〜
1.はじめに
本研究は、F.VAN.SCHOOTENが彼の著書『ORGANICA』で行っている、機構を用いた楕円と双曲線の作図法を教材化し、授業実践を行った。研究目的・研究方法は以下の通りである。
2.研究目的・研究方法
(1)研究目的
機構を用いた作図に関する授業を通して、生徒が数学が身近に行われている事を感じ、数学観を変容することを目的とする。
(2)研究方法
以下の下位課題を設定し、ビデオ及び生徒へのアンケートを下にこの下位課題が達成されたかどうかを判断する
課題1:生徒が、作図して得た結果を証明し、確認することで授業前後で生徒の数学に関する考え、特に身近な事に関して数学が役に立っているかについて、意識の変化が生まれるか。
課題2:授業前にはあまり身近でなかった楕円・双曲線、機構について、授業を行うことで、従来の代数的な定義を用いた授業とは異なるイメージを育てられるか。
3.機構の教材化について
本研究では、パンタグラフと4節リンク機構のひとつである交叉平行四辺形型の機構を扱った。授業では前者を使って、相似な図形の作図と、点対称な図形の作図を行った。また、後者を使って楕円と双曲線の作図を行った。導入においては、同じく4節リンク機構のひとつである凧型の機構を扱った。
生徒の活動は基本的に2人1組で行い、厚紙で作った機構を配布し、、それを用いて画用紙に作図をした。その後出来る図形を予想し、それを証明してみるということを何度か行った。また、機構の動きを確認するために作図ソフトであるCabri
GeometryUを用いた。
4.「機構による作図」の授業概要
報告書、スライド、テキスト等を参照
5.結果と考察
課題1について:アンケート結果などから、道具を用いて生徒が実際に作図を行い、予想し証明を行うことで、数学のよさや、身近な所で数学が使用されていると感じることが出来たと考える。検定を行った結果、有意差も見られた。また、二人一組で作図を行うことで、お互いに意見を出し合いながら活動することが出来た。また、既習事項を使って、結論を導くことで、数学観に変容があったと考える。
課題2について:授業において生徒は実際に道具を手にとって動かすことにより、ある条件を満たす点の軌跡がどんな図形を描くのかを自分の目で確認することができた。また、スクリーン上でも、作図ソフトであるCabriGeometryUを用いて確認することが出来た。そのことから、楕円・双曲線がどのような定義で、どのような図形であるか確認できたはずである。また、機構に関してもアンケートから、授業前後で機構について知識が深まり、興味がも持てたと述べられている。