要約 |
筑波大学教育研究科 豊﨑絵美 |
本研究題目 科学系博物館における「パンタグラフ」の演示に関する研究 ―算数・数学的活動による発展的な学習を通して― 活動実施日 2005年11月19日 学習指導要領との関連 報告書を参照 指導可能学年 幼稚園児~ |
1.はじめに 本研究ではパンタグラフを題材とした国立科学博物館での算数・数学的活動を通して、個々の未習内容を既習内容からの発展的内容として学習し、算数・数学に対する興味・関心を喚起することができるか考察した。 |
2.研究目的・研究方法 研究目的 本研究では、年齢、学年、既習内容の異なる対象に、パンタグラフを題材とした同じ教材を用いることで、各自の未習内容を既習内容からの発展的内容として学習するとともに、算数・数学的活動を通して算数・数学に対する興味・関心を喚起することを目的とする。 課題1:パンタグラフを用いて図を描き、その仕組みの探求を通して、パンタグラフの持つ算数・数学における未習内容を既習内容から発展的に学習できるか。 課題2:パンタグラフを用いた算数・数学的活動を通して、算数・数学に対する興味・関心を喚起することができるか。 研究方法 パンタグラフを題材とした相似図形に関する教材を開発し、それを用いた活動を全年齢・全学年を対象に、国立科学博物館にて行う。そして、事後アンケートとビデオによる活動記録に基づき考察する。 |
3.パンタグラフの教材化 本研究の活動で題材とするパンタグラフは作図器のことである。活動では、相似パンタグラフを取り上げ、描いた後の図がわかりやすいように、もとの図形として三角形を用いた。 パンタグラフのもつ算数・数学の中の一つが「相似」である。相似パンタグラフの仕組みや証明を理解するには、相似についての知識が必要である。しかし、相似が未習であってもパンタグラフのもつ算数・数学には関係・系統性があるため、既習内容を問わずに学ぶことができる。 小学校低学年の児童は、「三角形」という図形について学習でき、高学年に児童は、、もとの図と描いた図の比較から比や乗法の内容として学習することができる。中学校の生徒には、図形の比や合同な内容と関連付けられ、証明や中点連結定理の良さを感じることができる。高等学校以上の生徒、学生、大人には、平面図形やベクトルなどの内容と関連付けて学習でき、今回の学習指導要領の改訂で削除された「移動」「変換」として扱うこともできる。 これらのことから、本研究の活動では、年齢、学年、既習内容の異なる対象に、パンタグラフを題材とした同じ教材を用いた。 |
4.パンタグラフの数学的解説 報告書を参照。 |
5.教具としてのパンタグラフ 報告書を参照。 6.パンタグラフを題材とした活動概要 報告書を参照。 |
7.議論 課題(1)について 活動では、パンタグラフの仕組みの探求を通して、気付いたことを、自分の持っている知識から発言し、既習内容を利用することができたことがわかる。例えば、小学校2年生や4年生の児童が、もとの図と描いた図を比較して「2倍」と発言し、事後アンケートでも、「直線」や「比」について発展的に学習することができたことがわかる。また、既習知識の多い大人の発言「(パンタグラフの3点を指して)この距離が違うから三角形にならないんだよ」という発言を受けて、パンタグラフの仕組みを考えていた児童が「そうか」と発言し、他の参加者も同様に気づくことができたため、新たな視点から考えることができたことが伺える。 これらのことから道具の仕組みについて予想を立て、実際に操作をし、その結果から新たな知識を得ることによって、パンタグラフの持つ算数・数学における各自の未習内容について自ら考え、探求することができ、既習内容から発展的に学習できたといえる。 課題(2)について 事後アンケートでは、「大きさがちがくてもおなじかたちをかけるのでどうしてだろうと思いました」「三角形を使わないのに大きい三角形がかけるのにおどろいた」「なぜとめる位置によって描ける形がかわるのかをよく知りたいです」という記述があり、これらから、パンタグラフの仕組みについてより深く知りたいという探究心が沸いていることがわかり、パンタグラフの持つ算数・数学について学ぶきっかけが作れたことがわかる。また、活動は博物館で行ったため、パンタグラフの仕組みについて自分の興味から探求することができ、「楽しかった」「不思議でした」といった感想も聞け、算数・数学に対する興味・関心を喚起することができたといえる。 これらのことから、既習内容は異なっていても、同じ教材によって楽しく学ぶことができ、体験を通して、算数・数学に対する興味・関心が喚起できたといえる。 |
参考文献 ・礒田正美(2004). 道具による普段と違う数学体験・数学学習の価値を考える.数学教育, 45-7, pp.4-9. ・川野邊一晃(2003). 数学的活動を生かした図形指導に関する研究-対称図形作図器(LEGO)を利用した発展的な学習を通してー. 中学校・高等学校数学科教育課程開発に関する研究(10), 筑波大学数学教育研究室, pp.220-252. ・小川義一・下条隆嗣(2004).科学系博物館の学習資源と学習活動における児童の態度変容との関係性. 科学教育研究, 28-3, pp.158-165. |