要約 |
筑波大学教育研究科 大和田裕子 |
本研究題目 科学系博物館における「変換」の学習可能性に関する研究 −エッシャーを題材に− 授業実施時期 2005年11月 学習指導要領との関連 報告書を参照 既習事項 参加者によって異なる 指導可能学年 幼稚園児以上 |
1.はじめに 本研究では、エッシャーの絵を用いて変換に注目した敷詰めを題材にした。敷き詰め模様という日常の事象を扱い、その中にある数学に数学的活動を行うことで気づき、数学的活動の楽しさを見いだすことができるかを考察した。 |
2.研究目的・研究方法 研究目的 日常の事象を取り扱うことで、数学を身近なものとして捉え、数学への興味・関心を高め、「数学的活動(算数的活動)」をすることに楽しさを見いだせるかを考察することを目的とする。 課題1:複雑な敷き詰め模様のもととなる図形に気づくことができるか。 課題2:敷き詰めるという「数学的活動(算数的活動)」を通して、そこに合同変換が隠されていることに気づくことができるか。 研究方法 エッシャーの絵を元にオリジナルな教材を作成し、授業を行う。ビデオによる授業記録、事後アンケートを元に考察する。 |
3.敷き詰めにおける変換に注目した教材化 本研究では、日常の事象を扱うとしているが、日頃目にしている壁などの模様ではなく、エッシャーの絵を用いた。これは、エッシャーの絵の持つ不思議を探ることは興味・関心をひくと考えたからである。また、中学校学習指導要領改訂の際に、中学校1年で扱われていた平行移動、回転移動、対称移動といった合同変換は削除された。しかし、小学校学習指導要領解説算数編(1999)の第2学年の図形において、「形を構成したり、分解したりする活動の中で、言葉で表現したりまとめたりする必要はないが、ずらしたり、回したり、裏返したりするなどの移動の操作を豊富に体験させることは、図形についての感覚を豊かにする上で大切である。」としている。 以上を受けて、本研究では、敷き詰め模様と合同変換の関係に着目し、教材化を行った。 |
4.敷き詰めにおける変換に注目した数学的解説 報告書を参照。 |
5.敷き詰めにおける変換に注目した教具の解説 報告書を参照。 |
6.敷き詰めにおける変換に注目した活動概要 報告書を参照。 |
7.考察 課題1について 鳥を正方形にする際、1つ目の移動ではただはまることに驚いただけであったが、2つ目の移動をする際には、はまる場所に気づいた参加者が居た。また、はまる場所には気づくことができなかった参加者でも、はまったことで鳥が正方形になって驚いている様子が見て取れた。また、正方形を準備することにうなづいている様子が伺えたことからも、複雑な敷き詰め模様のもととなる図形が、平面を敷き詰められる正方形であることに気づけたと考えられる。 課題2について 回転移動の敷き詰めの例や自由に敷き詰め模様を作ることを通して、試行錯誤しながらも、回転の中心に気づいた小学校2年生や小学校4年生が居たことは、敷き詰めの中に合同変換(特に回転移動)が隠されていることに気づいたと言ってよい。また、「いろんなどうぶつなどでパズルを、できたりするかなぁと思いました。(小2)」、「パズルってこんなに楽しいとしった(小2)」、「さんすうのべんきょうでパズルは学校ではやらないのでばえんきょうになりました。(小4)」という事後アンケートの結果からも、パズル(敷き詰め模様)の見方が変わったと言え、今回の数学的活動を通して、敷き詰めの中に数学が隠されていることに気づいたと考えられる。 |
参考文献 文部省(1999). 小学校学習指導要領解説: 算数編. 東洋館出版社 文部省(1999). 中学校学習指導要領解説: 数学編. 文部科学省 |