(新製写角簡儀 『六分圓器量地手引草』 ) |
写角簡儀は,指示鏡,固定鏡とも全て六分儀と同じである.目盛が刻まれた弧度は円周の3度半を取る.(即ち7度まで測れる.) 指示鏡の中心までの長さ,即ち反射線の長さを6尺(=1間)として作る.(またはその2倍の1丈2尺,3倍の1丈8尺の物もあったという.) 固定鏡の向きは反射線に対して45度に置く.固定鏡の中心より反射線と直角に見口から小型望遠鏡で覗く.固定鏡の調整も六分儀と同様である.
(1) 左図を読むと,
「図の如く海岸或ハ砦城等へ備置て
目的を対鏡の玻璃に視通し遊表を
運旋し目的一体に視
定ること下図の如し
度数を以て左に著
す表を査検して町数
及間数を直に知なり」とある.
その意味は以下である.「図のように海岸あるいは砦や城を目的とし,それを固定鏡の透明ガラス越しに見通し指度捍を回して,目的が一体に見定まるようにする.下図のように目えている.(その測り得た)角度で左に著した表を見て,町数及び間数を直接知る.」 |
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(2) 1
右図がその表である.更に使用法を詳しく言うと,まず距離10間の距離に立てた棹をこの装置で狙う.(視準部には小型望遠鏡を備えている.) この時,指度捍の目盛を0度に合わせておく.そして固定鏡と指示鏡とにおける棹の像が一致するように固定鏡の向きを微調整する.10間より遠い目標に対しては,視差の為に両像が一致する目盛は0度ではない.器械の長さは6尺(=1間)にしてあるから,この角度と距離の関係を予め計算で表にしておき,測定角度からこの表を用いて距離を求めた.例えば,測得角度が4度の時に対応する目的距離を読むと33間5分である.表を見ていくと最も遠距離の表値は11町9間5分2厘(約1200m)で,対応する角度は5度37.5分になっている.
即ち,写角簡儀は距離計である.
cf)1尺=約30cm |
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(写角簡儀 表 『六分圓器量地手引草』 ) |
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参考文献:1) 中村士(2001). 東アジアの天文・暦学に関する多角的研究,
大東文化大学東洋研究所,pp.71-119
2) 松崎利雄(1979). 江戸時代の測量術,総合科学出版
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