目盛を読み取る指度捍IBはIを中心に円弧AB上で回転する.Iには指度捍と共に回転できる指示鏡がAIに平行に,Hには器械に近い方が鏡,遠い方が透明なガラスである固定鏡が取り付けられている.指度捍を右に寄せ示度を0度に合わせ,無限遠点G(水平線等)からの光がHのガラスを通し見口Eから見える時,同じGからの光が鏡IとHで反射し,Eにくるよう固定鏡を調整する.(I,Hの鏡面は平行になる.)そこで,EからGを見つつ指度捍をAからBまで動かすと,天体Cからの光がI,Hで反射し見えたとする.Hのガラスを通しG,鏡にCが見えている.つまり水平方向からの光GHEと天体からの光CIHEとを同時に同じ視野内に見る(左右一直線に並ぶ)事ができる.
その時,鏡の回転角と反射角の関係からβ=2αであるから,指度捍の回転した角の2倍がG,C間の相距度(相互角距離,角度)である.したがって,円弧部に実際の角度の2倍の数値を目盛っておけば,水平方向Gと天体Cとを同じ視野に入れる事によって,天体の高度角CIG(β)を直接円弧上で読み取る事ができる.水平線と天体とを同時に同じ視野の中で測定できるので,船が動揺しても比較的容易に天体の高度角が得られる.八分儀は中心角が45度より90度,六分儀は中心角が60度より120度までの角を測れる.
Gが無限遠でない時は,固定鏡の向きを調整し,ガラスと鏡の像がずれないようにする.つまり,IGとHGがGで交わり,これら2直線は平行でなくなり,Gが近い時は無視できない視差が現れる.元々水平線(地平線)と天体間の角を測る器械である為,目標が遠くない時は,この視差が欠点となる.しかし,バーニア副尺を採用し精度が良く,かつ軽量・小型化が可能になった八分儀・六分儀は江戸時代の日本では,その精度の上で地上測量における器具として大変賞用された.左図は,「新製六分圓器」とあるように地上測量用に作られた六分儀である.地上測量用なので太陽観測の為のサングラスは取り除かれている.また指示鏡と固定鏡の平行性を若干調整できるようになっている.
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