江戸時代後期,六分儀のような新しい測量器具の流行の背景には,中国からの三角法の伝来があった.即ち,1727年(享保12年)に中国から『崇提暦書』が輸入され,その中に三角関数表が含まれていた.当時,三角関数は,ある半径の四分円の弧に対してできる八つの線分「正弦,余弦,正切,余切,正割,余割,正矢,余矢」が用いられ,合わせて八線と言われた.数値は半径が1の時に対応する角で実際にできる線分の長さを記している.
1850年(嘉永三年)に刊行された山本正路『量地必携』の八線表
縦15cm,横10.2cmのポケット版になっている.これは実際の測量にあたって外で使われる機会が多くなり携帯するのに便利なため小さくした.
0度00分〜45度00分までは2対ある表の右の表の右の目盛で,上の「正弦」,「正切」,「余弦」,「余切」に対応する数値を読む(順読み).
45度00分〜90度00分までは2対ある表の左の表の左の目盛で,下の「正弦」,「正切」,「余弦」,「余切」に対応する数値を読む(逆読み).
これは、三角比の性質
sin(90°−θ)
=
cosθ
cos(90°−θ)
=
sinθ
tan(90°−θ) = 1/tanθ を利用している.
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